広告代理店がクライアントから預かった広告費を売上として計上するなど、不正な会計処理を行った場合、刑法・会社法・税法の複数の観点から重大な責任を問われます。
最終更新:2025-11-2
1. 広告費の性質と処理方法
広告費は、広告主のために一時的に預かる性質を持つ「預り金」です。実際に配信・運用が完了して初めて、代理店の売上となります。
未実施の広告費を先に売上計上することは、会計上の虚偽表示に該当します。
2. 不正会計と刑事責任
未実施広告を売上に計上した場合、刑法第246条(詐欺罪)または第247条(背任罪)、さらにクライアント資金を私的流用した場合は業務上横領罪(刑法第253条)が成立するおそれがあります。
3. 税務上のリスク
未実施広告費を売上計上すると、法人税法第22条に基づく「益金の過大計上」となり、税務調査で追徴課税・重加算税の対象になります。
4. 会計基準と監査上の指摘
会計基準(企業会計原則)では、実現主義の原則に基づき、取引が完了した時点で初めて収益を認識します。
虚偽計上は、会社法960条に基づく刑事罰(10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金)の対象となる可能性もあります。
5. よくある質問
Q. 預かった広告費を一時的に社内経費に使うのは違法ですか?
A. はい。広告主の委託資金を他目的に流用すれば業務上横領罪が成立する可能性があります。
Q. 税務署からの指摘を受けた場合、どのような処分になりますか?
A. 重加算税や延滞税の対象になります。悪質と判断された場合は、刑事告発に至ることもあります。
まとめ
広告代理店における不正会計は、民事・刑事・税務の三重リスクを伴います。
クライアント資金の管理は、信頼の根幹です。会計処理の透明性を確保することが、長期的な企業価値を守る唯一の方法です。
