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広告費を返金しない場合の法的リスク

※本ページは一般的な法的情報の整理を目的としており、特定の事案に対する法的助言ではありません。

最終更新:2025-11-2

1. 「返金しない」という行為の法的位置づけ

クライアントから預かった広告費や手数料を、契約終了後・未実施分にもかかわらず返金しない場合、民法上の債務不履行(第415条)または不当利得(第703条)に該当する可能性があります。返金拒否は単なるトラブルではなく、契約・会計・刑事の三方面で重大な責任を生じさせます。

2. 違法と判断される典型的パターン

  • 契約解除後も未使用の広告費を返還しない
  • 「返金不可」とする条項を事前説明なしに適用
  • 実施内容や期間が不明確なまま請求を続ける
  • 預り金を自社利益に転用する

3. 主な法的根拠

  • 民法第415条(債務不履行責任)…契約上の義務を履行しない場合、損害賠償・返還義務を負う。
  • 民法第703条(不当利得)…正当な理由なく得た利益を返還する義務がある。
  • 消費者契約法第10条…一方的に消費者の利益を害する「返金不可」条項は無効。
  • 刑法第253条(業務上横領罪)…預り金を自己の利益に使用すれば刑事罰の対象。

4. 刑事責任:業務上横領罪の可能性

返金すべき資金を意図的に返還せず、自社の運転資金や他案件に流用した場合、刑法第253条(業務上横領罪)に該当する可能性があります。

業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。

広告代理店はクライアント資金を「委託管理」する立場です。返還義務を怠る行為は、単なる契約違反を超え刑事的横領と判断されるおそれがあります。

5. 不正会計・課税リスク

返金義務のある預り金を「売上」として計上する行為は、不正会計(粉飾決算)と見なされる場合があります。
これにより、税務署調査での追徴課税や重加算税、さらには虚偽記載罪の対象にもなり得ます。

  • 未返金分を収益化 → 粉飾・虚偽計上
  • 返金義務を帳簿上で隠蔽 → 不正経理
  • 税務署調査で発覚 → 青色申告取消・追徴課税

6. 正当な返金拒否が認められる条件

  • 契約書で返金不可を明示し、かつ説明・同意がある
  • 契約範囲内で業務が完全履行されている
  • 顧客都合による中途解約で合理的損害がある

7. 信用・取引への影響

返金トラブルはSNSや口コミで拡散し、信用失墜・契約減少・行政調査に直結します。
一時的な資金保持は、長期的には事業存続を危うくします。


よくある質問

Q. 返金拒否は契約書に書かれていれば問題ないですか?

A. 契約書に記載があっても、説明不足や誤認誘導があれば無効とされる場合があります。消費者契約法第10条では、一方的に不利益な条項は無効とされています。

Q. 返金に応じないと刑事責任が問われることはありますか?

A. クライアントから預かった資金を返還せず転用した場合、刑法第253条(業務上横領罪)に該当する可能性があります。悪質なケースでは刑事告発・捜査対象になります。

Q. 預り金を売上計上した場合、どのようなリスクがありますか?

A. 返金義務のある預り金を売上として処理すると、粉飾決算・不正会計に該当する可能性があります。税務調査で発覚すれば重加算税や刑事罰の対象にもなります。


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