『注意点まとめ』と連動し、トラブルを未然に防ぐための法令知識を整理しています。
本ページは、公開されている法律・ガイドライン・行政資料をもとに、株式会社しごとウェブ編集部が中立的な立場で内容を整理・解説したものです。
特定の企業や団体を非難する意図はなく、一般的な情報提供を目的としています。
法的判断が必要な場合は、必ず弁護士など専門家にご相談ください。
※本ページは一般的な法的情報の整理を目的としており、特定の事案に対する法的助言ではありません。
最終更新:2025-10-30
1. 景品表示法(不当表示の禁止)
主旨: 不当な表示を防ぎ、消費者が正確な判断をできるようにする法律です。
- 効果・実績・比較などには客観的根拠(データ・検証条件)を保持。
- 誇張や断定的表現、再現性のない成功事例の一般化は禁止。
- キャンペーン表示では期間・条件・上限を明示。
【関連法令】
・不当景品類及び不当表示防止法
出典:e-Gov法令検索
2. 特定商取引法(勧誘・表示)
主旨: 訪問販売や通信販売などでの誇大広告や不当勧誘を防止する法律です。
- 広告・申込みページに事業者情報、価格、支払・解約条件を明示。
- 実際より著しく有利・優良と誤認させる表現は禁止。
【関連法令】
・特定商取引法 第11条(誇大広告等の禁止)
・特定商取引法 第12条(表示義務)
出典:e-Gov法令検索
3. 特定電子メール法・電気通信事業法(配信の適正化)
主旨: 広告メール配信や通信サービスにおける誤認防止・同意管理を定めた法律です。
- 広告メール送信には事前の同意(オプトイン)が必要。
- 送信者名・連絡先・解除方法の明示が義務。
【関連法令】
・特定電子メール法 第3条(送信の適正化)
・特定電子メール法 第5条(表示義務)
・電気通信事業法 第27条の2(不当な取扱いの禁止)
出典:e-Gov法令検索
4. 個人情報保護法・Cookie等(プライバシー)
主旨: 個人情報や識別可能なデータを適正に取得・管理するための法律です。
- Cookie・アクセス解析の利用目的を明示し、同意を取得。
- 委託・再委託時の安全管理措置(DPA契約)を文書化。
【関連法令】
・個人情報保護法 第16条(利用目的の特定)
・個人情報保護法 第17条(適正な取得)
・個人情報保護法 第20条(安全管理措置)
出典:e-Gov法令検索
5. 専門分野の個別規制(業種別の広告規制)
- 医療・美容: 医療広告ガイドライン・薬機法(効果断定・体験談禁止)。
- 金融・投資: 金融商品取引法 第38条(断定的判断の提供禁止)。
- 健康食品: 景表法+薬機法(効能・効果の誤認防止)。
【関連法令】
・医療法 第6条の5(広告規制)
・薬機法 第66条(誇大広告の禁止)
・金融商品取引法 第38条(断定的判断の提供禁止)
出典:e-Gov法令検索
6. 職業安定法(求人広告の適正化)
主旨: 求人情報を公正に掲載し、求職者が誤認しないようにするための法律です。
- 雇用条件・勤務地・給与などを正確に表示する義務。
- 虚偽の広告や誇大な求人条件は処分対象。
【関連法令】
・職業安定法 第42条(虚偽広告の禁止)
出典:e-Gov法令検索
7. 下請法(制作・運用の外注時)
主旨: 発注者による不当な取引行為を防止し、公正な取引を保護する法律です。
- 受領拒否・支払遅延・不当減額を禁止。
- 検収・支払条件を契約書やメールで明確にする。
【関連法令】
・下請代金支払遅延等防止法 第4条(親事業者の禁止行為)
出典:e-Gov法令検索
8. 著作権法・商標法(クリエイティブの適正利用)
主旨: 画像・コピー・ロゴなどの著作物の無断使用を防ぐ法律です。
- 著作物の使用許諾範囲(媒体・期間)を契約で明確化。
- 生成AI素材の利用時も出典と権利関係を確認。
【関連法令】
・著作権法 第17条(著作者の権利)
・著作権法 第21条(複製権)
・著作権法 第27条(翻案権)
出典:e-Gov法令検索
9. 消費者契約法・民法(契約条項の適正化)
主旨: 消費者を不利な契約から保護する法律です。
- 「必ず効果が出る」など断定的説明は禁止。
- 重要事項を故意に伝えない勧誘も無効。
【関連法令】
・消費者契約法 第4条(不実告知・断定的判断の提供)
出典:e-Gov法令検索
10. 資金決済法(前払式支払手段)
主旨: 前受金やポイントなどの取扱いを規制し、利用者保護を目的とする法律です。
- ポイント・預り金スキームが該当する場合は登録が必要。
- 資金保全措置(保証金・信託)を講じることが義務づけられる場合あり。
【関連法令】
・資金決済に関する法律 第3条(登録義務)
・同法 第14条(前払式支払手段の届出)
出典:e-Gov法令検索
11. 消滅時効と公訴時効について
広告代理店とのトラブルでは、法的請求に期限があります。ここでは民事の「消滅時効」と、刑事手続の「公訴時効」を区別して整理します(本項は一般的情報であり、個別案件は専門家へご相談ください)。
1. 消滅時効(民事:返金や損害賠償の請求期限)
- 契約(債務不履行)に基づく請求:
原則 5年(主観的起算点) または 10年(客観的起算点) のいずれか早い方で時効。
例)「支払ったのに成果物や報告がない」等の契約違反に基づく返金請求など。
※2020年4月1日施行の改正民法に基づく一般ルール。 - 不法行為に基づく請求(説明義務違反や不正な請求等による損害):
原則 3年(損害と加害者を知った時) または 20年(行為時から) のいずれか早い方。
例)広告費の流用が疑われ、損害発生と相手方を特定してから3年以内の請求が必要。 - 生命・身体侵害の特則:
人身被害に関する損害賠償は 5年(知った時)/20年(行為時から)。広告トラブル(経済的損害のみ)には通常該当しません。
実務の起算点の考え方(よくある疑問)
- 「知った時」=請求が事実上可能な程度に、損害の発生と相手方を把握した時点。
- 「行使できる時」=契約違反が確定し、法的に請求できる客観的な時点。
- メール・請求書・通帳明細などの証拠保存が起算点の立証に役立ちます。
広告トラブルの例(クイック早見)
| 類型 | 典型事例 | 時効の目安 |
|---|---|---|
| 債務不履行(契約) | 出稿・報告の不履行、契約上の説明義務違反 | 知った時から5年/客観的に10年 |
| 不法行為(経済的損害) | 広告費の流用疑い、虚偽の実績説明等 | 知った時から3年/行為時から20年 |
| 生命・身体侵害 | (交通事故・人身等の特例) | 知った時から5年/行為時から20年 |
経過措置: 施行(2020年4月1日)前に発生した古い債権には、旧法が適用される場合があります。迷ったら専門家に確認してください。
2. 公訴時効(刑事:捜査・起訴の期限)
詐欺や業務上横領などの刑事事件に関する時効は、刑事訴訟法の「公訴時効」の問題で、民事の消滅時効とは別枠です。時効期間は罪の重さで異なり、原則として犯罪行為が終わった時から進行します。
公訴時効の期間(概要)
- 長期10年未満の拘禁刑または罰金に当たる罪:5年(ほか、刑の重さに応じて1年~25年などの区分あり)
- 共犯がいる場合は、最後の行為が終わった時から全員に時効進行
- 公訴提起(起訴)で進行が停止
3. まず何をすべきか
- 請求書・契約書・やり取り(メール)・通帳明細を保存・整理。
- 「いつ、何を知ったか」を時系列にメモ(起算点の裏付け)。
- 相手に資料提示を正式要請(媒体入金記録・配信実績・提示できなかった理由)。
- 合理的説明がなければ、税務署や消費生活センター等への相談・通報を検討。
※本ページは一般的な情報提供です。個別案件は事実関係と適用法により結論が異なります。必ず弁護士等の専門家へご相談ください。
12. 関連する法的ガイド
以下は、広告代理店の業務に関連する主要な法令・ガイドラインです。違反リスクを未然に防ぐために、あわせてご確認ください。
- 虚偽・誇大広告の禁止(景品表示法第5条)
優良誤認・有利誤認の判断基準と行政処分事例を解説。 - 不当勧誘・不実告知の禁止(特定商取引法第6条)
誤認を招く営業トーク・無料誘引表示などの違法性を整理。 - 広告費の不正会計と税務上の問題
預り金の不当処理・業務上横領・課税上のリスクを解説。 - 報告・説明義務(民法415・644)
クライアントへのデータ開示・レポート共有に関する義務。 - 説明義務違反とは
契約時に重要事項を説明しない場合の法的責任。 - 広告費を返金しない場合の法的リスク
返金拒否・預り金不返還による民事・刑事・会計リスク。 - 広告費の返金請求ガイド
民法703条に基づく不当利得返還請求の進め方。 - 違約金・中途解約(消費者契約法9・10)
高額な違約金条項が無効となる法的要件。 - 契約していない請求(詐欺・脅迫)
不実告知・架空請求への対応と通報手順を整理。
13. よくある質問
Q. ネット広告代理店が守るべき主な法律には何がありますか?
A. 主に景品表示法・特定商取引法・個人情報保護法の3つが重要です。虚偽・誇大広告、誤認を招く表示、説明義務違反、データの不正利用などは法令違反にあたります。詳細は本文内の各法令セクションをご覧ください。
Q. 法令に違反した場合、どのような処分がありますか?
A. 行政指導・業務停止・許認可の取消し・課徴金・刑事罰など、内容に応じた措置が取られます。特に有料職業紹介事業や広告代理業として登録している場合は、違反の程度により事業停止処分や行政報告命令の対象となります。
Q. 違法・不当な取引を受けた場合はどこに相談すればよいですか?
A. 契約トラブルや不当請求などがある場合は、消費生活センター(188)または厚生労働省職業安定局、税務署などに相談できます。悪質な勧誘や虚偽説明がある場合は、契約トラブル事例集も参考にしてください。
まとめ
ネット広告代理店に関する取引は、多くの法律が重なり合っています。
それぞれの法律の趣旨を理解し、表示・契約・運用・委託・情報管理の各面で法令を遵守することが、信頼される広告運用の基本です。
